2025年1月の読書記録
今月から読書記録をつけようと思います。今月は23冊、まんが入れると35冊。
ノンフィクション(8冊)
📔 『生きづらい明治社会 不安と競争の時代』/松沢裕作/岩波ジュニア新書
★★★★★
TLで勧められて読む。『東京の下層社会』(紀田順一郎)なんかは昔読んだことがあるので、新しい知見がたくさん得られたわけでははないが、江戸時代以前の「助け合い」というのが村請け制度(村の年貢は村全体の責任)によるものだった話だとか、明治時代の東京下層民の中に「苦学生くずれ」が多くおり、それが暴動の主体だったという話には興味が湧いた。何を隠そうわたしも新聞奨学生制度に騙された「苦学生崩れ」だった頃があったのだ。
以下引用。まさに今の時代はこうだよなあ。
❞「成功したものは正しく努力したものであり、失敗したものは努力をしなかったダメ人間である」という信念がいきわたると、このように「ダメ人間にならないためには、どんな手段をつかってでも成功する」という行動をとる人があらわれてきます❞
📔 『北極男 増補版』/荻田泰永/ヤマケイ文庫
★★★★★
角幡氏の新作が2500円とかしてベトナム在住者には高すぎると悶々としていたら荻田氏のこれが Unlimitedに入っていたので。この人は探検家であって物書きとしてのキャリアは薄いが、十分おもしろく読めた。
共感できたのは「それほど北極って魅力があるんですね」みたいに他人に言われたときに、「魅力があるから行くんじゃなくて、行っているうちに俺が魅力を見出したと言ったほうがいい」みたく語るところ。そーだそーだ。ベトナムに来たこともないやつに「魅力があるんでしょうね」とか言われるの俺も嫌いなんだよ。
あと冒険・秘境という不自由な環境に身を置くことによってこそすべての行動が確固たる自分の選択となって、それこそが自由なのだ、みたいな話。うんうんよくわかる。俺も探検家じゃないけど、そういう経験はかなりある。
📔 『狩りの思考法』/角幡唯介/アサヒ・エコ・ブックス
★★★★☆
なんだ、角幡氏も「北極バカ」になってるんじゃん。本書は『極夜行』以降の角幡氏のシオラパルクを中心とした北極旅行・エスキモー(実は蔑称ではないそうです)・狩猟についてのエッセイ。前半は「現代文明人が囚われている未来予測というフィルター」についての話、後半は「狩猟と偶然・必然・神について」の話のようで、それを繋ぐのがエスキモーの「ナルホイヤ(予測するなんか馬鹿らしい、という含意があるのではと角幡氏が感じている、「わからん」と言う語)」という口癖なのだろう。
「その子が生まれたのはまぎれもなく奇跡的な偶然の所産というほかないのだが、当の親から見たら、自分の子供はその子以外には考えられず、その意味でその子が生まれたのはまさしく必然としか思えない」
全くその通り。角幡氏は結婚や子どもができることに関しても、「運命に巻き込まれ自分が変えられていく」ということの不思議よくを語っている。現代日本人はそういう勇気(見る前に跳べ?)を失っているよなあ、だから晩婚少子化経済不安が……とかも思ってしまう。
📔 『食べものから学ぶ現代社会──私たちを動かす資本主義のカラクリ』/平賀緑/岩波ジュニア新書
★★★★★
経済の本。
「使用価値」と「交換価値」の倒錯の問題。これは現代日本の民主主義で、とくに若い人、メディアに乗せられやすいひとが、選挙のことを競馬のようにとらえて「勝ち馬に投票してしまう」のと同じね。政治家という利用価値ではなく、俺はみんなに認められる選択をしたぞというアピールが大事だと思ってしまう。
それからタックスヘイブンの話。スーパーで売られるパンひとつですら大資本が仕組んだ超巨大なタックスヘイブンによる脱税システムが裏にあるのには驚いた。あと貿易というものはすでに国と国がするものではなく、大資本が利益を増やすためのメカニズムになっているという話。
「緑の革命」で飢えるものがかえって増えていたという話は知らなかった。
便利なツールを利用しているつもりがいつしか情報を吸い上げられ、自主決定権もどんどん狭まれていくビッグデータシステムには私も抗っている。
超良書。
📔 『人とミルクの1万年』/平田昌弘/岩波ジュニア新書
★★★★☆
乳製品大好きパーソンなので面白く読めた。ミルクからの加工系統図の整理は素晴らしい。あとインドにおける乳製品の話が面白かった。確かに言われてみれば、中央アジア~中東、ヨーロッパに次ぐ第三の乳製品繁栄エリアなのだよなあ。
ベトナムは乳製品不毛地帯で特にチーズが高いんだが、東南アジアはそもそも乳製品が栄えなかった土地だったんだなあと。ベトナムの場合は豊富な魚、中国由来の豚肉文化でタンパク質が十分にあったのが原因か。あと日本で蘇が滅びた理由も知らなかった。
関係ないですが一番好きな乳製品はブリィチーズです。
📔 『足利将軍たちの戦国乱世 ──応仁の乱後、七代の奮闘』/山田康弘/中公新書
★★★★☆
1年くらい前に買って積読だった物をなんとか読み切った。この時代、両細川の乱を中心にもうほんっとわかりにくい。ただし面白い時代ではあるので何度か読み直さないとなあ。ただこの本、読みづらい。もうちょっと主人公を立てて、編年体ではなくもっと列伝風に書いてほしかった。あと要所要所で挟んでくる当時の貴族やらの日記抜粋とその解説、邪魔。
雑感
・細川高国、不運の連続やん。あ、自業自得?
・重要人物が急死しすぎ!
・足利義昭、政戦ともに結構やり手だったんじゃん
・大館尚氏、長生きしすぎだろ!
📔 『砂糖の世界史』/川北稔/岩波ジュニア文庫
★★★★★
こういう本はいろいろな教養をいちどきに復習できていいですね。しかし資本主義は恐ろしい。
📔『飼い食い 三匹の豚とわたし』/内澤旬子/角川文庫
★★★☆☆
内澤旬子の文章ニガテ。なんか目が滑っちゃうんだよな。この本もかなり飛ばし読みしたので1時間くらいで読み終わってしまった。まぁそこそこ楽しめました。
フィクション(15冊)
📔 『アリアドネの声』/井上 真偽/幻冬舎
★★☆☆☆
つまらん。作者の筆力が足らない。オチが安易すぎる。ってか登場人物気づけよそんなの。あとオチの部分の驚きを登場人物の一人称で語らせているが「それって作者の感想ですよね」としか感じられない。あと舞台装置がデカすぎ。大地震で都市1個破壊しておいて、2人救助する物語で終わっちゃう。破壊するならちゃんと社会への影響を描け。もうちょっとリアリティ出そうとか思わないのか?
📔 『殺人依存症』/櫛木理宇/幻冬舎文庫
★★★★☆
📔 『監禁依存症』 /櫛木理宇/幻冬舎文庫
★★☆☆☆
📔 『残酷依存症』/櫛木理宇/幻冬舎文庫
★★★★☆
3連作とは知らずに3冊めから読んでしまった。作者の筆力があるのでただのエログロ小説だとは感じられなく、結構面白く読めた。でも2作めがダルかった。
📔 『福家警部補の挨拶』 /大倉崇裕/創元推理文庫
★★★☆☆
この作者の他の著作のなんとか言うのがちょっと気になったが、それを買う前に読み放題に入っていたこれを読んでみた。
いわゆる倒述ミステリで、犯行の様子が描かれてから、その犯人を追い詰めていく探偵役の様子が描かれるもの。短編集。ただ文章が私には合わないかなあ、読むのにけっこうつかれた。ハラハラ度は結構あると思うので暇つぶしにはなるかも。ただ主人公の描写がうっすい。魅力が感じられない。
📔 『本丸 目付部屋 権威に媚びぬ十人』 /藤木桂/二見時代小説文庫
★★☆☆☆
最近時代物は室町モノばかり読んでいるのでたまには江戸モノを、と思ったが、全然おもしろくなかった。
江戸の官僚・サラリーマンを描く時代小説というのは一つのジャンルだと思うのだが、「じゃあこれ現代劇とどこが違うんだよ」となると、そのポイントにうまく魅力を付与させるのは至難の業ではないか? じつはこの本は最後まで読んでいない。んが、特別に供養のために読書日記に記す。
📔 『震える天秤』/染井為人/角川文庫
★★★★☆
📔 『悪い夏』/染井為人/角川文庫
★★★★★
📔 『正義の申し子』/染井為人/角川文庫
★★★★★
上に書いた順で読んだ。まず予備知識ゼロで『震える天秤』。タイトルと出だしから社会派ミステリだよな?と思わせつつ途中でオカルトになりそうな雰囲気もだしつつ結局は社会派。この作者初めてだったんだけど、人物の書き分けがうまいし、複数の登場人物のエピソードが結構早くつながってくれるので読んでてストレスがない。あとセリフがすごく自然でうまい。全然『芝居臭く』なくてよろしい。
『悪い夏』は社会派ノワール、と言った感じ。冒頭部で生活保護を悪く描いている部分があるが、別にそういう内容ではないので安心してください。
『正義の申し子』は作者の同じテイストながらもスラップスティックでかなり笑える一冊。「この消火器が火を吹くぜ」には笑った。
作者の経歴故か演劇っぽさがあって面白く読みやすい。いい鉱脈を発見できたのう。
📔『行動心理捜査官・楯岡絵麻 サイレント・ヴォイス』/佐藤青南/宝島社文庫
★★★★☆
📔『行動心理捜査官・楯岡絵麻 ブラック・コール』/佐藤青南/宝島社文庫
★★★★☆
なんかこういう特殊な肩書を持った美人女性が主人公の警察ミステリーって1ジャンルを成してるよねえ。1巻は、回想シーンを除くと取調室と打ち上げの焼き鳥屋での会話のみで構成された短編集。いわゆるアームチェア探偵ものに近い?というか鯨統一郎『邪馬台国はどこですか』みたいな形式。2巻目はそこから逸脱するが、驚くべきは主人公の過去を形成する重要事件の決着がその2巻目でついてしまったのに、どうやらシリーズは全8巻あるらしいということ。まぁ2巻までが KIndleUnlimitedなので、そこまで読めばいい暇つぶしにはなると思う。
📔『薬も過ぎれば毒となる 薬剤師毒島花織の名推理』/塔山郁/宝島社文庫
★★★★☆
📔『甲の薬は乙の毒 薬剤師毒島花織の名推理』/塔山郁/宝島社文庫
★★★★☆
一応はミステリなのかなあ。今まで読んだ本で言うと北村薫の『覆面作家』シリーズにちょっと雰囲気が似ているかも。鈍感男女のほのぼの恋愛付きミステリ。
📔『アゲハ 女性秘匿捜査官・原麻希 』/吉川英梨/宝島社文庫
★★☆☆☆
うはははは、荒唐無稽にも程があるジェットコースター警察スパイテロリズムサスペンス。何なんだこれは(笑) このシリーズ他にも何冊か KIndleUnlimitedに入ってるけど、もうこれ以上読まねえよこんなの(笑)
いや、でもちょっと面白かった……
📔『殺人鬼フジコの衝動 』/真梨幸子/徳間文庫
★☆☆☆☆
「イヤミス」(厭なミステリ)に分類されてるけどミステリじゃないよな。露悪趣味サスペンス。虐待の連鎖の結果としての「殺人鬼の女」を描いているわけだが、おいおーい、男の責任どこいったー!虐待の連鎖は男にも責任あるやろー!ごっそり抜け落ちてるやんけー!
続編も Unlimitedに入ってるけど読みません。作者の筆力もあまりないし。ご都合主義だし。
まんが(12冊)
📔 『山と食欲と私 19巻』/信濃川日出雄/バンチコミックス
★★★☆☆
最終回で主人公がエベレストで遭難して生死不明で終わんねえかなあ、とか思いながら惰性で読んでます。
📔『しあわせは食べて寝て待て』 1巻 /水凪トリ/A.L.C. DX
★★★★★
ああ、好きよこういうの。持病持ちの女性のスローライフまんが。欲が低くて、でも何も諦めてなくて、低空飛行をしっかりとできていて。読み放題でお試ししたけど購入候補になったかも。
📔『しあわせは食べて寝て待て』2~5 巻 /水凪トリ/A.L.C. DX
★★★★☆
無料分のつづきを買った。私はときおり女子向けまんがに耽溺してしまい気がつくと何巻も買ってしまっていることがある。悔いはない。
📔『恋とか夢とかてんてんてんてん』/世良田波波/SHURO
★★★★☆
絵は好きだしこのアホ主人公の行く末を追いかけてみたいという気持ちは掻き立てられるが、「あざといサブカルまんが」のような気もしてちょっと「乗せられないぞ」という気持ちにもなる。たぶん続きは読まない。
📔『瓜を破る』1~5巻/ 板倉梓/ラバココミックス
★★★☆☆
目についたので無料分だけザーッと読む。なんか最近、おとなしい絵柄の、年齢的には中年だが本人はまだ若いと思っている年代が主人公の、性をテーマにした漫画多くないかねえ。そこそこ面白く読めるけど10分もあれば1冊読めてしまう軽い漫画。以前から思っているが、10分で読めてしまい読み返すほどの内容もない漫画を、作者が体を削って描いて、読者は700円も払うシステム、おかしいよね。