2025年6月の読書記録
6月はノンフィクション9冊、フィクション 2冊で合計 11 冊。まんが3冊を加えて 14冊。月の前半はかなりハイペースだったのだが後半いそがしくて殆ど本が読めなかった。残念。
ノンフィクション(9冊)
📔『知ろう 食べよう 世界の米』岩波ジュニア新書720/佐藤洋一郎
★★★★☆
コメを生物学、歴史、文化、環境学……と多彩な観点から勉強できる本。アジアでコメが主力穀物になった理由として、「コメとサカナ」「コメと鶏肉」の相性が良かったからだという話ついでに、「日本人ももともとは田んぼや川で取れる魚をよく食べていた。海産魚をこんなに食べるようになったのは近代以降」という話も。そうよね、ベトナムにいると「日本人は海の魚しか食わないんだ、と言って淡水魚を食わず嫌いする日本人」がたまにいるけど、それは戦後の冷凍技術・ガソリンをバカ食いする海洋漁業あってのことだよなあ。あとは「ヘルシーで体に良い」というアメリカのスシブームを支えたのは、日本やポルトガルからの鮮魚の空輸であったという「環境には最悪」だったみたいな話も。
📔『地を這う祈り』/石井光太/徳間書店
★★★★☆
先月に引き続き石井光太。本書も世界のスラム街や路上生活者のルポ。グラビア本なので電子書籍版は固定レイアウトになっており読みにくかったが、ページ数も少ないので出張の移動中に読めた。表紙には、水垢と苔で内側が緑色になった、15リットル程度に見える大型ペットボトルの水を抱えた女性。ああ、ベトナムでも北部の田舎で10年くらい前に見たことあるなあ。屋台を営んでいるっぽいおばさんがこういった不衛生な容器で水を汲んでいるところ。
📔『絶望の底で夢を見る』/石井光太/徳間文庫
★★★★☆
また石井光太。これで4冊目か。本作は作者の、個人的で、マージナルな(この言葉久しぶりに使った)体験を綴ったノンフィクションエッセイ集。地域は日本限定。この人の文章のうまさはストイックなまでの勉強・研究・練習の積み重ねによるものだったか。「1日3冊本を読み、小説やシナリオを筆写し、文章を書くという生活(中略)恋人からのプレゼントはすべて図書券、正月さえも断酒、デートは一切なし」だったそうだ。
📔『なぜ人は地図を回すのか 方向オンチの博物誌』/村越真/角川ソフィア文庫
★★★★★
Amazonのレビューでは低評価が多く、「方向オンチの気持ちがわかっていない」「方向音痴を直す本ではなかった」などというレビューが目立ったが、方向音痴とは真逆である私からすると「だから方向音痴がこの世に存在するのか!」と納得できる話がいっぱい詰まった本だった。また、よく「女性は地図が読めない」みたいなステロタイプに対して左派の人がよく「脳に男女差はない!」というような主張をすることがあるが、やはり男女差はしっかりあることが書かれている。男性は「心的回転」(例えば、窓のない建物に入って廊下を何回も曲がったあとで、近くにある公園やスーパーの方角をきちんと示せるかどうか)が得意で、女性は「物の配置を覚える」のが得意というのは明らかなのだそうだ。やっぱりね、機能に差はあるのよ。「差があるからこうだ」みたいな決めつけが悪いだけ。そういえば私はこの「心的回転」がほぼ完璧にできる人で、昔からこれが出来ない人が不思議でたまらなかった。あと私は一度通った道はほぼ覚えているので道を間違えてもすぐ気づくのである。あーそうそう、次に紹介する『まねが育むヒトの心』には、赤ちゃんの脳は「お母さんを好きになるスイッチ」があることが示唆されていた。男女差、やっぱあるんよ。
📔『まねが育むヒトの心』明和政子/岩波ジュニア新書
★★☆☆☆
私はバックパッカー時代に、言葉の通じない人とのコミュニケーションのために「まず真似して笑いを取る」をよくやっていた。今は日本語教師として、「会話は真似である。人は真似されると好意をもつのだ」と学生に教えている。そのためタイトルに惹かれてこの本を手にとって見たが、「マネの文化人類学」的な話はほとんどなく、「発達における真似」の話もあまり多くなく、結構な肩透かしだった。
📔『人を、殺してみたかった 名古屋大学女子学生・殺人事件の真相』一橋文哉/角川eBook
★★☆☆☆
名古屋「タリウム少女」老婆撲殺事件についての本、ということになっているが、著者の独自調査などはほとんどなく「ルポ」とは呼べない本。また内容も神戸の「少年A」や佐世保の「Nevada」や伊豆の「タリウム少女」、はてはそれをもとにした創作への言及へと話が飛びまくっている。この著者の本はもう読む必要なし。
📔『カラー版 インド・カレー紀行』/辛島昇/ 岩波ジュニア新書
★★★★★
カレーというのは本当にそれだけで1冊書けてしまうテーマだなあ。カレーの本読むの3冊めくらいかも。インド人がバナナの葉を皿にし、素焼きの土器でチャイを飲むのが「自分の使ったものが賤民に触れられないように/触れたものでないように」という理由だとは知らなかった。あと中村屋のボースってチャンドラ・ボースとは別人だったのか!
📔『でっちあげ 福岡殺人教師事件の真相』/福田ますみ/新潮文庫
★★★★★
虚言症のモンスターペアレンツ、その言うことを疑いもなしに信じたマスコミ、波風立たぬように扱おうとしてしまった校長、気が弱いため強く反論できなかった教師、この4者が引き起こしたとんでもない「冤罪」のドキュメンタリ。あーあー、私こういうのダメなんだわ。濡れ衣を晴らせない話は怖すぎる。そのためかなり飛ばし読みしてしまいました。
📔『地獄で生きたる』尾塚野 形/鹿砦社
★★★☆☆
どのようにしてか刑務所の外に持ち出せた死刑囚の獄中日記をベースに語る死刑囚ドキュメンタリ。面白かったですが、なんのためにもならない本だなあと。
フィクション(2冊)
📔『侠飯』2巻/福澤徹三 /文春文庫
★★★★☆
なんかシリーズいっぱい出てると思ったらドラマ化作品だったんですね。前作のニセヤクザコンビによって、今回は「追い出し部屋」送りになった若いサラリーマンが意識を変えていく話。今回ニセヤクザコンビはオフィス街の「移動屋台」を仮の姿としていた。主人公の若いサラリーマンはニセヤクザコンビを、最初は「たかが移動屋台」と、次には「ヤクザなんじゃないか」と見下し、しかし脅されると「怖くて命令に従い」、自分も脱サラして移動屋台を始めようとしたら「利用できそう」と思い……と、「自分の都合で人にレッテルを貼」ってばかりるいるのに、いままで「自分はまじめな人間だ」と思い込んでいた。うむ、大抵の人間はそうなんだよね。
📔『最後の毛布』/近藤史絵/角川文庫
★★★☆☆
何らかの理由で飼うことが出来なくなった犬を有料で預かる「養犬ホーム」が舞台の物語。いつもの近藤史恵節ではあるが、本作は事件らしい事件が起こらず、ちょっと肩透かしだった。
まんが(3冊)
📔『ザ・ファブル The Third secret』1巻/南勝久/ヤングマガジンコミックス
★★★★☆
えー、第3シーズン? えー?
📔『あかね噺』 17 巻/末永裕樹, 馬上鷹将/ジャンプコミックスDIGITAL
★★★★☆
相変わらず刊行ペースが早すぎ。
📔『クマ撃ちの女』15巻/安島薮太/ (バンチコミックス)
★★★★☆
今かなりたのしみに単行本を待っている漫画です。チアキさんの口調がフェミニストから叩かれそうですが、面白いですわ。ついになりふり構わず、違法行為に手を染めてまで「牙欠け」を置い始める今巻。中野もドローンを大量投入して参加。中野のバカさが面白い。そしてついにチアキさんと伊藤さんが雪中で15時間のビバークに……。まて次巻。
年間累計
月 | ノンフィクション | フィクション | 非まんが合計 | まんが | 月の総計 |
---|---|---|---|---|---|
1月 | 8 | 15 | 23 | 12 | 35 |
2月 | 3 | 7 | 10 | 4 | 14 |
3月 | 4 | 4 | 8 | 9 | 17 |
4月 | 9 | 5 | 14 | 3 | 17 |
5月 | 9 | 10 | 19 | 7 | 26 |
6月 | 9 | 2 | 11 | 3 | 14 |
累計 | 42 | 43 | 85 | 38 | 123 |