ベトナム語の「LỄ」とは何か? 日本語の「お祭り」とは何か?

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きっかけは学生の宿題でした。「あなたは日本に住み始めて何年か経ちました、昔日本語を教わった先生に日本での生活についてメールやSNSで相談してください」という宿題です。とある学生が送ってきたのが以下です。


 

「祭りが開催されている」のはいいとして、それで「どこにりょうこ(りょこう、の書き間違いですね)に行けばいいかわからない」?? かなり意味不明な文章ですよね。これを書いたのはある程度日本語の会話ができるのですが、独学が多く、時々とんでもない覚え違いをしている学生です。ちょっと考えてみて、このように添削しました。
 


Ý em muốn nói là “bg là ngày lễ”?? (君の言いたいのは、「いま祝日」、ということ?)と、聞いてみたら……ビンゴでした。
 

ベトナム語には LỄ という語があります。これは漢字で書くと「礼」。意味的には、たとえば ngày lễ (礼の日)とすれば「祝日」ですし、lễ hội (礼会)とすれば、英語で言う「フェスティバル」に当たる語となります。またベトナム語では、祝日・イベント・旅行・お祭り……などをよく「tổ chức(組織)」すると表現し、これは「開催」と訳されることが多いのです。このため、この学生は「祝日」のことを「お祭りが開催されている」という日本語にしてしまったのでしょう。ベトナムの感覚だと、「祝日」って、「政権が開催している lễ」なんですよ、確かに。

となると日越辞書などで「lễ hội」を「お祭り」と訳しているのも「いや微妙に違うんじゃないか」と感じられてきました。では日本語の「お祭り」の定義ってどうなってるんだろう? と思って、SNSでアンケートをとってみました。
 


 

母数はわずか7名と少ないですが、どうも「ハロウィンとお盆はお祭りだが、正月とクリスマスはお祭りじゃない」と感じる人がいるようです。あ、なんとなく見えてきました。日本語の「お祭り」は「知らない人同士で集まって同じことをする」という意味なんじゃないかしらん? 「ハロウィン……仮装して街に繰り出す、お盆……盆踊り・帰省ラッシュ」に対して、正月・クリスマスは「知らない人と一緒に」感は薄いですもんね。

ひょんなところから、日本語の「お祭り」の再定義ができました。やっぱり失敗は成功の母ですね。学生には今後とも楽しい間違いをたくさんしてほしいものです。