ブルネイに日帰りで行って帰れなくなるところだった話③
※このときのレートは、1リンギ=27円=5850ドン程度です
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バスはバンダルスリブガワン市街(小さい!)を抜け、国境方面に向かって走っていく。しかしローカル路線バスである。速度はずいぶん遅い。セリアに着くのは何時か、セリアから国境はタクシーか他のバスがあるのか、国境は何時に閉まるのか、不安だらけである。
バスはリアンの街で大通りを離れ、海沿いの小さな道に入ってしまった。結局セリアのバスターミナルについたのはもう夕方5時すぎ。バスをダッシュで降りてまわりの人に「タクシー!」と聞いて回るが、「今日はタクシーはもういない」と言われてしまう。そうだよなあ、車社会のブルネイだもん、国境の小さな街にそう何台もタクシーいないよなあ……。たぶん、1台か2台しかないタクシーが「今日はもうこのまま帰る」と最後の客を乗せていったとか何かなんだろう。
もうここに泊まるか、とも思ったが、昨日のニア国立公園からの帰路を思い出す。
そうだ、まだヒッチハイクがあるじゃないか。
セリアのバスターミナルから大きな国道まで約2kmを走る。サンダルの靴擦れが痛いが我慢する。国道で交差点の中央分離帯に陣取って、国境かミリかまで乗せてくれる車を探すしかない。
20分ほどアピールを繰り返したが止まってくれる車はない。しばらくすると中華系の大きなバスが通りがかったので停まってもらう。しかし、「残念だが、空き席がない」と断られてしまった。おそらく定員に関する法律は厳しいのだろう。
またしばらく粘っていると、逆方向から来たスポーツカーが停まってくれた。乗っていた中年男性に事情を話すと、「国境の手前までなら乗せてやる」という。話を聞くと彼はプラントエンジニアだそうだ。「いいなぁあんたはそんな旅行ができて」「え、ブルネイは金持ち国なんだろ、休みは取れないのか?」「休みなんかねえよ」などなど話しながら国境手前まで30kmほどを走ってもらった。「警察とかに見つかるとマズイからここで」と手前で降ろされる。すでに日はとっぷり暮れていた。
時計をみると18時45分。そこから国境に向かって駆け足開始。19時に国境が閉まったりしたら今度こそマズイ。まずはブルネイの出国手続き。係員に「徒歩なのか!?」とびっくりされる。「バスに置いて行かれたんだ」と適当なことを言っておく。
出国エリアを抜ける途中で、さっきの定員オーバーバスが私の横につけてきた。ドアから顔を出す乗務員に、「俺は走ってきた。あんた遅いな」と言うと、呆れた顔をしてまた走っていった。
マレーシアの入国手続きに入る前の国境緩衝地帯のヤブで立ち小便をする。最後っ屁である。さらばブルネイ。もう来ねえよ。
つつがなくマレーシアの入国手続きを済ませる。しかし今日一日で、マレーシア出国、ブルネイ入国、ブルネイ出国、マレーシア入国、マレーシア出国、ブルネイ入国、ブルネイ出国、マレーシア入国、と、パスポートのスタンプが8つも増えてしまった。
マレーシアに入ってからは、ミリに行ってくれる車を探す。中華系の男が乗せてくれた。事情を話すと、YEWホテルなら知ってるからホテルまで行ってあげるよ、という。途中で「マレーシアに入ってからはGrab使えばよかったじゃん」と言われるが、Grabのことなんかすっかり忘れていた。
今夜はマレー系フードコートでサテをテイクアウトして、また例の店で星州米粉(シンガポール風ビーフン炒め)。東南アジアでシンガポール風といえばカレー味を意味することが多い。ビールは2本つけちゃう。はぁ。疲れた。
(続く)