ムーカンチャイ県とラパンタン村の棚田②
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ベトナムの地名は、基本的に「ハ・ノイ(河内)」「ダ・ナン(冶囊)」「サイ・ゴン(西貢)」のように2音節(漢字で書けば2字)で成り立っている。例外として前に方角がついたり(バク・ミー・ロン:北美龍)、後ろに数字がついたり(タン・ソン・ニャット:新山一)して3音節になることもある。
しかし、今回の目的地のムー・カン・チャイは純粋に3音節(3文字)の地名のようだ。チャイは「塞」ではないかという説もあるらしい。歴史をたどると、ここはかつて北ベトナムにあった「タイ・メオ(泰・苗)族自治区」(あるいは「西北自治区」)の一部だったようだ(Wikipedia中国語版へのリンク)また、ムーカンチャイ県の中でも棚田で有名な場所は La Pán Tẩn(ラ・パン・タン)村という。これはパ行の音があるため、間違いなくベトナム語ではなく少数民族の言葉であろう。
もともと、現在のラオカイ省のダー川西岸、ライチャウ、ディエンビエン省のあたりは、「シップソーンチャウタイ」(タイ12州)という半独立国だったのである。
バスが国道32号線の大屈曲部を超えると、Ba Kimという街で何度か荷物や人の積み下ろしをした。この街で目を引いたのが、モン族のスカートを売る店である。写真には撮っていないが、このあたりでは伝統衣装を着て籠を背負い歩くモン族の女性が多くいる。また、この街ではないが、以前ソンラ省ではモン族の女子高生が、スカートだけ民族衣装を着て学校に通う様子も見たことがある。モン族には多くの氏族があり、青モン、赤モン、紫モンと、氏族ごとに色が決まっている。
ベトナム等社会主義国の小学生の制服は赤いスカーフが特徴。姪っ子を思い出す。
結局、バスがムーカンチャイ県中心街に入ったのは12時過ぎだった。市場前で降りる際に、運転手が前方を指差して「そこでバイクが借りられる」と言ったが、実際どこなのかはよくわからなかった。県中心街にはいくつかのミニホテルがあり、十分ここで宿泊もできそうだった。
かわいらしい子犬が三叉路のど真ん中で寝ている。なんともまぁ田舎らしい風景だ。カフェ(写真中央)があったのでとりあえず入る。食事を勧められたが、コーヒーだけ頼んでトイレを借り、しばし休憩する。店の娘さんに「ここでバイクを借りれる場所はないか?」と聞くと、もう少し先の、TGDD(大規模チェーンの携帯電話ショップ)の向かいのバイク屋で借りられるという。ついでにギアローに戻る終バスを確認すると、2時と4時にあるという。4時のに乗ればいいだろう。
コーヒーを飲み終わり、ペットボトルの水を1本買ってバイクショップに向かう。「バイクを借りたいのだが、3時間でいくらだ」と聞くと、店の親父はしばらく考えた後で100千ドンだという。少々高い(ハノイやサイゴンでは1日120千ドン~140千ドンが相場)が、まぁ観光地価格だ。デポジットにパスポートを渡したほうがいいかな、と思ったが、パスポートをちらっと見せても何の反応もない。なんと、デポジットも誓約書もなしで借りられてしまった。考えてみれば、こんな山奥の盆地でバイクを盗んで峠超えする外国人もおるまい。ギアローのホテルといいここといい、田舎はおおらかである。なおこのあたりはカフェでも、適当に店の冷蔵庫から飲み物を出してあとで精算する方式である。
少々ガタがきているバイクだったが、まぁいいだろう。ガソリンも十分に入っていた。
(続く)