ベトナム英語解読法
ベトナム在住の日本人の方、また日本在住のベトナム人と交流の機会がある日本人で、ベトナム人が何を言っているか全くわからないがよく聞いてみるとどうやら英語らしい、という経験をされた方は多いと思います。
一般的なベトナム人の英語の発音は、日本人のカタカナ英語とどっちもどっちレベルで酷いです。しかも酷さの方向性が真逆なので、お互い全く聞き取れないのです。
今回、ベトナム人英語の特徴を挙げてみようと思います。
ベトナム語のスペルそのままで読む
ベトナム語を少しなりとも勉強したことの有る方ならおわかりでしょうが、ベトナム語はローマンアルファベットを使いつつも、「綴り」と「発音」の組み合わせに独特なものがあります。例えば「TR」は日本語で言う「チャ行」、「X」は日本語で言う「サ行」になります。そしてベトナム人が何も考えずにこれを英語に適用してしまうと……
Train → チェイン
Tree → チェー
True → チュー
Six → シッス
となります。
JWZが読めない
ベトナム語のアルファベットには、FJWZの4文字が欠けています。Fは旧宗主国フランスのFなのでさすがに読めますが、JWZをうまく読めず、適当にごまかす人が多いです。
Japan → ザーパン
はサッカーの生中継などを見ているとよく聞こえてきますね。まぁベトナム語には「ジャ行」がないというのもありますが。Wに関しても、先日私の勤め先のベトナム人スタッフが、WAY という英単語を「ワエイ」とカナ転記している事件がありました。
また、乾杯のときにベトナム人は「Zo!」といいますが、これは北部弁なら「ゾー」で日本人の感覚通りなのですが、南部人は「ヨー!」と発音しますので、南部人は Zooを ヨーと読んだりしてしまいます。
東南アジア特有の末子音の弱さが出る
これはベトナム人に限らず、タイ人やカンボジア人も同じだと思いますが、語末の子音をはっきり言わない、いや、言ってはいけないのです。このため……
passport → パッポー
wave → ワッ
となります。「パッポー」はベトナムに限らず、東南アジア在住の日本人にはもうおなじみの単語ですね。Waveはホンダのバイクの名前です。
なお、余談ですが、このためにベトナム人でもベトナム語のスペルを間違えることがあります。たとえばバイクや車のトランクのことを cốp (コップ)というのですが、この語を初めて知った時、妻にスペルを聞いてみたら「cốt」だと言っていました。またベトナム南部弁で 10を chục というのですが、どう聞いても chụp と言っているようにしか聞こえません。いや間違いなく一部の人は「チュップ」と言っています。語末の子音が弱すぎるから混乱が起きているのです。
LとN が入れ替わる
これはハノイ人に多く、そのためハノイ人はハノイのことをよく「ハロイ」と言います。ベトナム語として完全に定着しているものに以下のようなものがあります。
Noel(ノエル:クリスマスのこと) → ノーエン
これが他にも波及し、以下のようになります
Yakult(ヤクルト) → ヤックン(LがNになり、さらに語尾のTは発音しない)
アルファベットの読み方が違う
日本語で「エー、ビー、シー」と読むのは英語風の読み方です。ベトナムは旧フランス植民地ですから、フランス式に読みます。すなわちABCは「アー、ベー、セー」です。このため、コンビニの名前はこうなります。
CircleK → ソッコッ・カー
BとPが入れ替わる
ベトナム語では、Bは語頭(厳密にいえば音節の頭)にしか来ず、Pは語尾(厳密にいえば音節の末)にしか来ません。このために語頭のPはBに、語尾のBはPに化けやすいです。ちなみに地名の「サ・パ」などは語頭にパがありますが、これは少数民族の言葉で、ベトナム語ではありません。ベトナム語として完全に定着しているものに以下のようなものがあります。
poupe(フランス語で「人形」) → Búp Bê
これが他にも波及し、以下のようになります
Pierr Caldin(ピエール・カルダン) → ビエー・カンディン
合わせ技
これまで述べてきた特徴の合わせ技が強すぎて、最近全く聞き取れなかった語があります。これは乳製品のブランド名なんですが……
TH・TrueMilk
→ ✗ ティー・エイチ・トゥルー・ミルク
→ ○ テー・ハッ・チュー・ミン
では聞いてみましょう
ホンダ・べトナムの人気バイクに Air Blade という車種があります。私の発音で申し訳ないですが、これを「アメリカ風、ベトナム風、日本風」の順で言ってみました。まぁ、こんな感じですね……。
あれ、こうしてみるとカタカナ英語も本当に酷いですねえ……。