6月5日:デット島からクラチエまで、ラオス−カンボジア国境移動(前半)

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※この時所持していた通貨のレートはおおよそ10千キープ=14.06円でした。
※地図と旅程はこちらを参照。
※会話はあまり英語は使用していません。またラオ語は、「指差し会話帳」にあるような簡単なフレーズを見様見真似で喋っているだけです。

 
朝はいつもどおり5時頃には起きる。まだ一度も朝日を見ていなかったのですぐに着替えて外に。髪の毛はぼうぼうだが、帽子をかぶってしまえばどうでもいい。3分ほど歩いて、島北端の船着き場に向かう。

 

デット島北端の船着き場
 
残念ながら空は一面曇っており、朝日は拝めなかった。東南アジアではどこでも朝は早いものだが、この島はさすがにのんびりしており朝早くから活動している人は少ない。夜遅くまで観光客相手の店を開いている人が多いというのも影響しているのだろうか。通りにいるのは犬と鶏ばかりである。そういえばこの島のレンタル自転車に鍵がないことを以て、「犯罪なんかない島なんだな」という感想を述べる人がいるが、わたしは商店の軒先に監視カメラがあるのに気づいてしまった。なお東南アジアで監視カメラのことはよく「CCTV」と言われる。「中国中央電視台」のことではない。Closed Circuit TeleVisionの略で、ようはカメラのみ、あるいはカメラとモニタのみの閉じた回路の監視装置(つまり画像の流出や、別の場所からの監視などが起こらない)のことである。近年はおそらく、動くものに反応するセンサーとセットになった、動画記録式の、カメラのみタイプが多いのだと思う。

 

監視カメラ
 
宿に戻り、しばし休憩の後にシャワーを浴びて荷造りをするともう8時近い。電気のブレーカーを落として、部屋の南京錠を他の部屋のようにぶら下げたままにしてバンガローを後にする。予想通り宿の受付には誰もおらず、声をかけても人が出てくる様子はない。2,3分そこに留まったが、向かいの店のおばさんも私が出ていくのを見ているだろうからいいか、とそのまま出立した。

 
8時ともなると集落は動き始めており、商店兼両替所兼ツアーデスクのおばさんも営業を開始している。そこは無視して船着き場まで出てみる。桟橋から少々離れた場所で船を操っている若者がいるので「ナカサンまで行きたい」とラオ語で声をかけてみるが、手を横に振られるだけであった。しばらくして、下流のほうから別の若者が桟橋に小舟を寄せて来たのでそちらに声をかけると、しばらく戸惑った様子だったが恥ずかしそうに「30千だ」という。どうも島で出たビールの空き瓶を本土に戻す船のようで、荷の積み込みをやっている。便乗していいのだろうか。しかしその若者はすぐに別の中年男に声をかけ、中年男は桟橋の横につけてあるバイク用フェリーを指差して「15千だ」という。なるほど、やはり正規の船に乗れということか。WEBで他の人の旅行記を昨夜見た所、ボラれそうになっただとか、人が集まるまで船が出なかったとかの話があったが、私がラオ語をつとめて使っているのが良かったのかもしれない。中年男がお金を数える仕草をしてくるので、15千キープを前払いする。

 
バイク用フェリーは2艘の小舟の上に板を渡した簡易的な双胴式で、バイクなら3台ほどは運搬できそうだった。すでに1台のバイクと女性2人が乗船しており、私が乗り込んでビールケースに座るとすぐの出発になった。8時半ごろのことである。

 

桟橋の杭を押して船を沖に進める
 

同乗の女性ふたり
 

朝のメコン川
 

船は細い水路をゆく 

 
20分少々の乗船で船は本土側についた。バイクフェリーのため、階段で降りる旅客用の桟橋ではなく少々上流にある坂道式の専用桟橋への着岸となった。乗客とは言え少しは手伝ったほうがいいだろう。船頭にアイコンタクトを送り、桟橋の杭を掴み、片足を桟橋にかけて船を寄せる。すぐに船頭もこちらにやってきて船をもやい始めた。「サイバイデー」と挨拶をしてその場を去る。

 
初日にここに着いたときはすぐに船に乗ってしまったので気づかなかったが、やはり本土側は庶民らしい風景が広がっている。店先ではラオス特有の串焼きや、東南アジアどこにでも見られる揚げ菓子の類が安価で売られていた。サトウキビジュースを作る機械はベトナムのもので、ちょっとうれしくなる。

 

ベトナム語が書かれている
 
桟橋近くにいたサムロー(バイクの横にサイドカーのように屋根付き荷台を取り付けた三輪タクシー)に「ボーダー、カンボジア」と声をかけてみたが、同僚と顔を見合わせて、「市場の方にいけ」というようなことを言われる。たしかにガイドブックのロンリープラネットにも、サムローのチャーターは岸壁から500mほど離れた市場兼バスターミナルで、と書いてあった。果たして500mほど歩き市場につくと、初日に乗ってきたものと同じようなソンテウに人がぎっしり乗ったのに行き会う。「どこ行きですか?」と尋ねると「パクセー!」とのこと。逆に「どこに行く?」というようなことを尋ねられたので、また「ボーダー、カンボジア」と言うと、近くにいたサムロー乗りが「俺が乗せていくよ」というようなことを言う。「いくらですか?」と聞くと、噂に聞いたとおり「100千」とふっかけてくるが、悪気のある顔には見えない。「高い!」というとすぐに「50……いや、60」という。「50?」と聞き返すと「50だ」と人の良さそうな顔で言う。

 
サムローの荷台にはたくさんの荷物が乗っており、これと同乗かと思ったがさにあらず、この荷はすべてパクセーゆきのソンテウに積まれていった。荷が空になると、「乗れ乗れ」と合図をしてくる。今日はまだ何も食べていなかったので、飯を食うよ、という仕草をするとウンウンと頷く。どのくらい待たせていいかわからなかったので、テイクアウトできるバゲットサンド(カオチーパッテエ)の屋台のおばさんを見つけて値段を聞くと「5千だ」という。10千出すと「2個買って」と笑う。「1個!」といって5千のお釣りをもらう。

 
カオチーパッテエを齧りながらサムローに乗り込む。運転手に「50?」と改めて聞くと、バイクのガソリンタンクを指差して、困った顔で「60」という。いいだろう、今日は気分がいい。「60ね、オッケー」と言うとすぐに走り始めた。

 
このサムローには2年前にも乗ったことがあるが、全身に風を受けて進む爽快感はかなりのものである。速度があるぶん、ベトナムのシクロよりも気持ちがいい。国道13号線に出るためにガタガタの道を少々進むと、先方からやってくる大きめの白いバスがある。観光ツアーバスかと思ったが、通りすがりに見えた文字は「LAOS-CAMBODIA」というものだった。なるほど、これがロンプラにも書かれていたソリヤ・プノンペンの定期バスだろう。ロンプラの書き方では「国道13号線で捕まえることの出来るバス」かのような印象だったが、きちんとナカサンのバスターミナルに停まるのだろう(※ナカサンのバスターミナル・船着き場は13号線から3.5kmほど横道に入ったところにある)。時計を見ると9時5分。おそらくナカサン発は9時半であろう。サムローの交渉が面倒だとか、危険そうだとか思うのならこのバスに乗るのもありだと思う。

 


爽快なサムローでの移動
 
後半に続く。