つれづれ日本語ベトナム語 ~格助詞の大切さをどう教えるか~
以前こちらのベトナム語記事でも書きましたが、ベトナム語は「孤立語」で動詞や形容詞の活用がなく、格助詞も存在しない言語です。だから「格」(語がその文の中でどんな役割を受け持つか)が「位置」で決まります。日本語は格助詞が存在しますから、語の役割は格助詞が決めます。
ベトナム人が日本語を勉強するときの鬼門のひとつが格助詞であるというのは、日本語教師ならみんな実感していることでしょう。いくら教えてもなかなか格助詞の間違いは治りません。
ベトナム人が「私をごはんが食べます」なんて言った時、多くの人は「ご飯が人を食べている絵」を黒板に描いたりして、間違いの意味を教えていると思いますが、もう一歩ベトナム語に寄り添って、以下のような事も教えるといいでしょう。
さて、あなたは以下の2つのベトナム語の違いが分るでしょうか?
2. Anh yêu nhiều em
Anhは「お兄さんくらいの歳の人、もしくは、女性から見た男性の恋人」ですね。文頭にあるのでこれは主語になります。yêu は「愛する」、nhiềuは「たくさん」、emは「妹くらいの歳の人、もしくは、男性から見た女性の恋人」で、この位置なので目的語です。
日本語に意訳するとこうなります
2.僕はたくさんの女の子を愛してる
ベトナム語では語順を間違えると意味が全く変わってしまうのです。ベトナム人の恋人にこんなことを言ってしまったら、大変なことになります。
これが日本語だったら、以下のように語順を変えても
僕はいっぱい君を愛してる
意味は全く同じです。意味を変えるためには
と、格助詞「の」を入れる必要があります。このベトナム語と日本語の例文を両方例示してみればいいでしょう。
また、おそらく、多くの日本語教師は「格助詞」という言葉をベトナム人に教えないでしょう。しかしやはり、これは教えるべきです。「格」はベトナム語でも「cách」(カック)なのですから、他の外国人より理解しやすいはずです。
ベトナム語で「資格」は tự cách です。「立場」は lập trường です。格助詞は
(格助詞は、ひとつの言葉にひとつの資格や立場を与える助詞。わたし”の”だと、”の”は”所有”の意味を補う、わたし”が”だと、”が”は”主語”という意味を補う)
とでも板書して、じっくり考えさせれば通じるでしょう。